復刻りんどう便り−第1弾 民法特集
【権利と義務(民法第1条)】
人の命を軽んじる世の中となりました。
人の権利、義務とは何でしょう。
民法の第1条には、次のように書いてあります。
第1条 私権ハ公共ノ福祉ニ遵フ
2 権利ノ行使及ヒ義務ノ履行ハ信義ニ従ヒ誠実ニ之ヲ為スコトヲ要ス
3 権利ノ濫用ハ之ヲ許サス
1は、私権はその内容及び行使の面で、公共の利益と一致すべきものであると書かれています。
つまり、私的利益を追求することは、社会全体の利益につながらなくてはならない、と説いているのです。
2は、信義に従い誠実に行動せよ、ということです。
「信義則」の原則といわれています。
例えば、契約の履行をする時は相手を裏切るな、とか、取引においてはフェアプレイでなくてはならない等、
権利と義務をお互いの信頼において履行するよう、説いたものです。
3は、権利の行使範囲を逸脱している場合をいいます。
権利を振り回した結果、相手の権利を侵害してしまうような場合に権利の乱用という事になるケースが多いようです。
このような生活上絶対に必要なルールを皆が守れば、もっと安心して生活ができるようになるのではないでしょうか。
【住 所】
皆様にも各々お住まいの家があるように、私たちには市町村への届け出をした住所があります。
さて、住所とは何でしょう。
「法律に書いてある。」と言うと、「知らなかった」と言う方もおられるかも知れません。
何の法律に書いてあるかというと、それは「民法」です。
民法第21条 「各人の生活の本拠を以ってその住所とす」とあります。 では、何のために民法は住所を規定したのでしょう。 |
- どこで債務を履行したらよいか
- 相続はどこで始まるか
- どこの裁判所に訴えたらよいか
- 議員の選挙にあたり、どこで投票するか
- 裁判所が民事に関する渉外事件を裁判するにあたり、どこの国の法律に従って裁判したらよいか
などを決める基準になるからです。
平成14年より、住民基本台帳ネットワーク制度が全国市町村でスタートしましたが、いくつかの市町村が反対を表明し、 完全なスタートとはいけませんでした。
国は各人の住所をはっきりさせるため住民基本台帳を設けたのですが、ある人の住所がどこか、を見極める上で、
重要な住民票の記載を義務付けたのです。
しかし、中にはホームレスや家出をしたきり行方不明、その所在を把握できない人もたくさんいるようです。
まだまだ北朝鮮に拉致されている人もいるかもしれません。
そういう事もありますが一応各人の住所を定めて、生活権の行使をしていく所が住所でありそのために法律化されたのです。
さて、それでは住所不明の場合はどうなるのでしょうか。
民法では、 「住所の知れざる場合においては、居所(きょしょ)を以って住所と看做す」 となっています。 |
いくら調べてもAさんの住所がわからない。
しかし、Aさんがこの場所にいることだけは確かである。
こういう場合には、そこの住所かどうかを問題にせず、住所に変わるものとして、
債務を履行したり、訴えを起こせばよいのです。
だから住所と居所の違いは、程度の問題に過ぎない、という事のようです。
これは、外国に住所がある人の場合も同じで、日本に住所が無いものについて、日本人、外国人の 区別がなく、日本の居所を住所とするという原則もあります。
しかし、権利を持つ者は義務を負うのも当然で、
「権利だけは日本で主張して、義務は知らんふり」−−−これは言うまでもなく、
いけない事ですし、そのような法律がある筈がありません。
いずれにしても、自分の住所を基点に、人々は活動しているわけですから、その生活の場所を大切に 人生を謳歌したいものです。
【時効についての話し】
「おい、おい、その話しはもう時効だよ。」などと、
都合の悪い時に持ち出してくるのが「時効」です。
ところで、時効と一口に行っても民事時効、又は刑事時効など、
いろいろとあります。
その中で私達の日常生活において最も身近なものは、
民事時効ではないでしょうか。
ここでは、その身近な民事時効について話します。
消滅時効 | 一定期間の経過により権利が消滅してしまうものです。 例えば、飲み食いのツケを1 年間払わないでいると消滅時効にかかり、飲食代金を支払わないと主張すれば払わずに済むのです。 又、借りたお金は10 年間督促がなく、支払わないと主張すれば返さずに済むのです。 |
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取得時効 | 一定期間の経過により、権利を取得するものです。 例えば、他人の土地を 20 年間所有の意思を以って平穏かつ公然に他人の物を占有したる者は、 20 年の占有期間経過により、その土地を取得できます。 (民法162 条) |
2.時効の中断
「時効の中断」とは、進行中の時効がある理由により効力を失う事をいいます。
時効が中断すると、振出に戻るわけです。
上記の話しばかりですと、何かうまい話しばかりのようですが、
借り得、買い得にならないようにする為には、
請求、支払督促をする事が大事になる訳です。
事項 | 時効期限 | 根拠条文 | 起算日 |
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一般貸金債権 | 10年 | 民法第167条1 | 弁済期日 (返済の日を決めていない時は 貸し借りの時から) |
医師・請負人の債権 | 3年 | 民法第170条 | 治療・工事が終了した時から |
売買代金 | 2年 | 民法第173条 | 売買をした時から |
飲食・宿泊代金 | 1年 | 民法第174条 | 飲食・宿泊が終了した時から |
預貯金の払戻請求権 | 10年 | 商法第522条 | 払戻請求ができる時から |
国税還付金請求権 | 5年 | 国通第74条1 | 請求することができる日から |
国税徴収権 | 5年 | 国通第72条1 | 法定納期限から |
賃金 | 2年 | 労基法第115条 | 支払日から |
失業給付請求権 | 2年 | 雇保法第74条 | 支給日から |
失業補償給付 | 2年 | 労災法第42条 | 支給日から |